胆石症とはどんな病気?胆石ができる原因や症状について!
当院では胆石症の治療を行っています。そもそも胆石症とはどんな病気なのでしょうか?
なぜ胆石症になるのか?どういった症状がでるのか?などについて紹介したいと思います。
胆石症とは
人は食事で摂取した脂肪やビタミンの消化・吸収を助けるために、肝臓で「胆汁(たんじゅう)」という黄褐色の消化液を作る機能を持っています。
この胆汁が通る道を胆道(たんどう)といいますが、この胆道に結石ができる病気が胆石症です。胆道は肝内胆管(かんないたんかん)、肝外胆管(かんがいたんかん)、胆嚢(たんのう)という3種類に分けられます。どこに結石ができるかによって、肝内結石、胆管結石(肝外胆管にできた結石)、胆嚢結石と名称が変わってきます。
現代では、中高年者では10人に一人は胆石を保有しているというデータがあります。
性別では男性よりも女性の方が多いです。
また、胆嚢結石は胆石症の約80%と最も多く、胆管結石は約20%、肝内結石は約2%といわれています。
原因
結石はコレステロ-ルを主成分とする「コレステロ-ル結石」、胆汁色素のビリルビンを主成分とする「ビリルビン結石」、「黒色石」に大別されます。
この中でもコレステロール結石の割合が7割~8割を占めています。
それぞれの結石によって原因が異なります。
・コレステロール結石
コレステロールが胆汁の中で結晶化した結石です。
本来は胆汁に含まれる胆汁酸の働きによって、コレステロールは胆汁内に溶けるため結晶化することはありません。しかしながら、以下のような理由でコレステロールの量が著しく増加するとコレステロールの一部が溶けることができず結晶化してしまうのです。
・非常に高い脂肪の食事の摂取
・肥満
・高脂血症
・糖尿病
・妊娠
・ビリルビン結石
「ビリルビン」は胆汁の色素成分です。もともとビリルビンは水溶性の成分なので結石になることはありませんが、胆汁内の細菌の酵素により成分が変化し、これにカルシウムが結合することで結石化します。また、胆汁がよどんでいると結石の生成を促進してしまうことになります。
胆汁に細菌が入ってしまう原因は、加齢などがあげられます。
・黒色石
先ほど紹介したビリルビンが過剰に増えたり、胆汁酸の濃度が下がったりするとビリルビンがカルシウムや銅などの金属元素と結合して複合体を作り、それが固まり黒色石となります。
症状
胆石症になるとどんな症状が見られるようになるのでしょうか?
それぞれの病気によって症状が変わってきます。
・肝内結石
発熱や腹痛がよくみられます。肝内結石になると結石により胆汁の流れが妨げられて胆管が炎症・感染を起こしやすくなります。
・胆管結石
発熱や腹痛(特にみぞおち)がよくみられます。また、尿の色がまるでウーロン茶のように茶色くなることもあります。
・胆嚢結石
無症状の人が多いのが特徴です。症状がでる場合は、上腹部の違和感や腹部膨満感などがでます。また、胆石疝痛(せんつう)と呼ばれる特徴的な腹痛を伴うことがあります。
これは脂肪分の多い食事をしたあとの上腹部の周期的な痛みで、背中や右肩のコリや痛みを伴うことがあります。放置すると慢性胆嚢炎の状態が長期間持続するため、高齢になるほど胆嚢癌を合併するリスクが増加します。
少しでもこのような症状に心当たりのある方は、お早めにご相談ください。
痔の種類や原因について!遺伝で子供へうつるのか?
痔について、どんな種類があるのか、原因はどんなことが考えられるのかを掲載します。
また、痔は遺伝するのかという質問を頂くことがありますので、それについても回答したいと思います。
痔の種類
痔核(いぼ痔)
痔核は、肛門粘膜がうっ血して膨らみ出血や痛みを伴うようになり、進行すると肛門の外に飛び出す脱肛の状態になります。
この痔核が内側にできたものを内痔核、外側にできたものを外痔核といいます。
原因
以下のようなことが原因になりえます。
・便秘
・トイレでの長時間でのいきみ
・長時間同じ姿勢でいる
・妊娠や出産
・下痢
・アルコールの飲み過ぎ
・辛いものの摂り過ぎ
・冷え
・ストレス
裂肛(切れ痔)
肛門の粘膜が切れて裂けてしまった状態です。慢性化すると見張りいぼや肛門ポリープを伴うようになり、排便時の肛門痛が半日以上続くため排便が苦痛になります。
原因
以下のようなことが原因になりえます。
・便を無理やり出そうとする
・慢性的な下痢による炎症
痔瘻(あな痔)
大腸菌などの感染により肛門粘膜に炎症が起こり、化膿して溜まった膿が肛門周囲の皮膚を破って流れでてしまう状態です。肛門粘膜の細菌の入り口から皮膚までトンネルのように貫通する特徴があります。
原因
以下のようなことが原因になりえます。
・下痢
・ストレスによる免疫力の低下
遺伝でうつるのか
痔が遺伝するという医学的な根拠はありません。
しかしながら、生活環境によって痔持ちの親の子が痔になりやすくなるということはあるかもしれません。食生活やアルコール、喫煙などの生活習慣により、後天的に痔になります。
また、身体の特徴や体質が似ることで痔になりやすくなることも考えられます。
例えば、肛門が狭い、肛門周辺の血管がうっ血しやすい、肛門の内側部分の組織を支える力が弱いなどの身体の特徴により痔になりやすかったり、便秘は痔の原因の一つですが、便秘になりやすい体質ということも関係してくるかもしれません。
このように、遺伝子のレベルで痔が遺伝するという根拠はありませんが、生活習慣や身体の特徴・体質などから、親が痔で悩んでおられる場合、お子さんも痔になる可能性は十分にありえますので、気になる方はお気軽にご相談頂ければと思います。
痔に効く治療薬はジオン!痛みや副作用、アレルギーはあるか?
今回は多くの方が悩みをお持ちの「痔」について書いてみたいと思います。
痔にはいくつかの治療方法がありますが、その中でも「切らない治療」であるジオン注入法という治療方法について詳しくご紹介します。
痔の治療の種類
痔には以下のような治療方法があります。
1、保存療法
痔の症状が比較的軽い場合に選択される方法です。
その中でも大きく2つの方法があります。
・生活療法
排便の方法を見直したり、食事内容を変更するなど、お尻に良くない生活スタイルを改善して痔の症状を緩和していく療法です。
お尻が冷えるような環境にいることも痔に悪影響を及ぼしますし、アルコールや喫煙、過度に辛いものを食べることも良くありません。こうした日常の習慣を改善していく方法です。便秘や排便時に数十分もいきんだりしないように排便習慣を改善することが重要です
・薬物療法
薬には外用薬と内服薬があります。
外用薬は痛み、腫れ、出血を抑える薬であり、内服薬は便をやわらかくして出やすくしたり、炎症をおさえるなどの目的で処方されるのが一般的です。
2、外科的療法
・硬化療法
痔核に注射することにより、痔核を硬化させ小さくし、出血しないようにします。
・ゴム輪結紮療法
痔核の根元に輪ゴムをかけ締め付けて痔核を壊死させます。
・手術療法
当院では排便毎に痔核が脱出してくる脱肛の症状が強い患者様にはPPH(直腸粘膜環状切除術)という方法が行っています。痔核の原因は直腸粘膜のゆるみですので、たるんだ直腸粘膜を切除して、粘膜を吊り上げて痔核を消す手術です。直腸粘膜は痛みを感じる神経がないため、従来の肛門部を切開する従来の手術よりも痛みが少ない根治手術です。
ジオン注入法とは
ジオン注入法は治療方法の中の「硬化療法」に該当します。痔を切ることなく治療ができるため、多くの方に選ばれている方法です。切らないため痛みもほとんどなく、日帰りで手術をすることができます。
<メリット>
・日帰りでできるため、仕事などで長期間休めない方なども治療を受けることができる
・痛みや出血が少ない
・保険が適用できる
※痔の状態によっては適さない場合もあります。
成分
ジオン注入法の薬はどんな成分でできているのでしょうか?
主成分は「硫酸アルミニウムカリウム」と「タンニン酸」というものです。
硫酸アルミニウムカリウムは、皮膚や粘膜の炎症をしずめるために使用されることが多く、口内炎や多汗症などにも用いられるものです。
そしてタンニン酸は、粘膜の保護作用や炎症抑制作用を示す成分です。
治療の流れ
麻酔をしてからの治療ですのでご安心ください。4段階注射法といって、4部位に分けて注射を行っていきます。治療時間は30分程度が一般的です。
治療後しばらくすると出血が見られなくなり、脱出もほとんどなくなります。
術後に気をつけることは?
日帰りで治療できますので当日に帰宅していただけますが、2日程は安静にする必要があります。
副作用は?
治療した部分の軽い痛みや腫れ、発熱などが治療後数日の間に発生する可能性はありますが、重篤な副作用は報告されていません。
再発は?
再発の可能性は0ではありません。
ジオン注入法に適した症状かどうかをきちんと診断した上で選択することが重要かと思います。
鼠径ヘルニア手術の術後の痛みや後遺症など観察項目は?食事は?
鼠径ヘルニアの手術は日帰りで行うことができます。
手術後をご心配される方が多いと思いますので、術後に注意する点について記載したいと思います。
術後の痛み
股関節という軟組織に対して手術を行なうため、体を起こしたり、しゃがむ・座るなどの動作時に痛みが走る場合があります。
特に従来の手術方法は、つっぱり感や痛みを伴うものでしたが、当院が行うクーゲル法は痛みが少なく済みます。
また、痛みが気になる場合は、鎮痛剤などの痛み止めの薬を処方していますので、ご安心ください。
後遺症や合併症はあるか
鼠径ヘルニアの手術後に後遺症が残るということはありませんが、稀に合併症が発生する可能性が報告されています。
主に以下の合併症があるとされています。
・感染
一般的な外科手術と比べると細菌感染などでの炎症が起こる確率は低く、仮に感染症になっても大事に至ることはありません。しかしメッシュに細菌がつくとメッシュを取り除くこともあります。
・慢性疼痛
疼痛とは、ジンジン,ピリピリ,チクチク,ヒリヒリ,ズキズキといったいわゆる「痛み」、その他に、焼けるような感じ、突っ張り、冷え、だるさなどの、不快に感じる状態をさしています。
手術後に6か月以上疼痛が長く続く状態を慢性疼痛といいます。
過去には、1割~2割の人が手術後に慢性疼痛を発症したと言われていましたが、現在はほとんどそういった合併症は起きていません。神経はヘルニアの穴をできる筋膜の上を走行していますので、筋膜の上にメッシュを固定する手術では神経障害性の慢性疼痛のリスクもあり、術者は手術の際に細心の注意が必要です。当院で行っているクーゲル法は筋膜の下にメッシュを挿入するため、慢性疼痛はほとんど起こりません。
術後に観察するポイントは?
手術後の観察では以下のポイントについてチェックされると宜しいかと思います。
・縫合された傷口(創部)
傷口からの出血や皮膚の変色、腫脹、熱感などがないかを確認します。
・疼痛
先に述べたような不快に感じる状況になっていないか確認します。
・腸の蠕動運動
蠕動運動(ぜんどううんどう)とは、腸の収縮・弛緩などの動きのことです。きちんと機能して排便ができているかを確認します。
・下肢の腫れ
足が明らかにむくみ、腫れていないかを確認します。
術後の食事で気をつける点は?
手術後の食事制限は特にありません。
しかしながら暴飲暴食はよくありませんので、排便がスムーズにいくような食事を摂ることが望ましいといえます。
その他、手術後にご心配なことがありましたら、クリニックにお問い合わせください。
小児の鼠径ヘルニア(脱腸)の症状や検査方法。年齢や遺伝は関係ある?
鼠径ヘルニア(脱腸)は、足の付け根から恥骨にかけての鼠径部(そけいぶ)の筋膜が破れ、腸などの内臓の一部が皮下に飛び出す病気をいいます。
この鼠径ヘルニアは成人だけではなく、小児もなる病気です。
小児の鼠径ヘルニアとはどのような病気で、どういった検査方法で見つかるのかについて説明したいと思います。
小児の鼠径ヘルニアの症状
オムツの交換などをしているタイミングなどで、赤ちゃんが泣いてお腹に力が入ると、足の付け根が膨らんでくることで鼠径ヘルニアに気づくことがあります。
最初の頃は膨らんでいる箇所を手で上手く押し込むことで飛び出ている内臓を戻すことができます。
しかしながら、その状態が長く続くとだんだん鼠径部が硬くなり、内臓が戻らなくなってきます(嵌頓=かんとん)。
こうなってくると飛び出た腸などの内臓の血流が悪くなり腹膜炎などを併発することもあるため、早期の治療が必要になります。
小児の鼠径ヘルニアの原因
成人の鼠径ヘルニアは生活習慣などが関わってきますが、小児の鼠径ヘルニアは先天性のものになります。
男の子の場合は、出産の少し前、睾丸が陰嚢内に下降してきます。
その時に腹膜も一緒に引っ張られ下降し袋状になります。
通常の場合は、その後腹膜は自然に閉じるのですが、それがうまく閉じなかった場合に、そこに腸などの臓器が入ることで鼠径ヘルニアが発症します。
女の子の場合は、卵巣が飛び出てしまうこともあります。
小児の鼠径ヘルニアになる年齢は?
鼠径ヘルニアが発症する年齢というものはありません。
小児の場合は先に述べたように先天性のものになりますので、出生した時点で鼠径ヘルニアになる可能性を持っているということになります。
乳児健診で診断されることもあります。
2歳以下の場合はヘルニアの穴が自然に閉じて治ることもあります。
したがって治療に関しては、当院では2歳以上の場合には自然治癒の可能性が低いため手術で完治させることをおすすめしています。
小児の鼠径ヘルニアの検査方法
検査は院長による視診、触診、超音波検査になります。
鼠径ヘルニアは遺伝に関係があるか
小児の鼠径ヘルニアが遺伝と関係があるという明確な根拠はありませんが、一般的には親子で体質が似るために、鼠径ヘルニアの家族歴を認めることが多くあります。
鼠径ヘルニア手術のメッシュの種類や素材!アレルギーや痛みは?
当院では、鼠径ヘルニアの手術には「クーゲル法」という術式を用います。
それはメッシュを使用して筋膜の穴を塞ぐ手術方法ですが、メッシュの種類や、どのような素材でできているのか、また体内にメッシュを入れてアレルギーや慢性的な痛みが発生する心配はないのかなどのご質問をいただきますので、鼠径ヘルニア手術時に使用するメッシュについて紹介したいと思います。
メッシュを用いる手術方法は大きく2つあります
メッシュを用いる手術方法は2つに大別されます。
違いはメッシュを使用する場所の違いです。
・従来のメッシュ手術
筋膜の穴の上からメッシュで覆う方法です。
メッシュがめくれないように、筋膜とメッシュをしっかり縫い合わせる必要があるため、手術後のつっぱり感や違和感を伴うことがしばしばあります。
・クーゲル法
筋膜の穴の下にメッシュを広げて補強する方法です。
お腹に圧力がかかってもメッシュがめくれることがなく、従来の方法よりも再発率が低くなります。また、手術時の傷が小さくすみ、手術後の痛みも少ないといわれています。
メッシュの種類や素材は?
鼠径ヘルニアの手術にメッシュが使われるようになった歴史は古く、1960年代ごろから使用されていました。
使用するメッシュには、主にポリプロピレンやポリエチレンという素材が使用されています。
ポリプロピレンは、強度が強い、吸湿性がない、酸やアルカリなどの薬品への耐性が強いという特徴を持ち、おむつや医療用の衣料、エアーフィルター、注射器などでも使用されている素材です。
このポリプロピレンメッシュを体内に入れることによる感染や拒絶反応については、アメリカの文献では、3,019例を治療したうち、感染件数は1件、拒絶反応は0件という報告もあり、非常に高い安全性が確認されているため、多くの医療機関で使用されている素材です。
また、アレルギー誘発性、発ガン性もないとされています。
このように安全性が確認されているからこそ、体内に入れることができます。
鼠径ヘルニアの傷が治っていく過程で、メッシュの網目に身体の組織が入り込み、強固な筋膜が作られ再発防止になっていくということです。
当院で行っているクーゲル法で使用するメッシュは下図で示す形状記憶型のメッシュです。
小さなキズから体内に挿入し、体内で形状記憶どおりにパッと広がり、ヘルニアの穴をふさぐことができます。
鼠径ヘルニアと運動。手術後や予防のための筋トレやスポーツは?
今回は鼠径ヘルニアと運動についての記事を掲載したいと思います。
鼠径ヘルニアになってしまった場合、きちんと治すには手術が必要ですが、手術後に運動・スポーツはできるのかどうかについて。また、鼠径ヘルニアを予防するために筋力トレーニングが有効かという点についても質問をいただくことがありますので掲載したいと思います。
鼠径ヘルニアとは
「鼠径(そけい)」部とは、太もももしくは、足のつけねの部分のことをいい、「ヘルニア」とは臓器や組織が本来あるべき場所から逸脱した状態のことを指します。
よって「鼠径ヘルニア」とは、足の付け根から恥骨にかけての鼠径(そけい)部の筋膜が破れ、腸などの臓器や組織の一部が皮下に飛び出す病気をいいます。
鼠径ヘルニアは脱腸とも呼ばれています。
鼠径ヘルニアになりやすい職業の傾向
鼠径ヘルニアは、鼠径部の筋膜が破れることで起きる病気ですので、老化などにより鼠径部の筋膜が弱くなると起こりやすくなるといえます。
また、日常的に腹圧がかかるような活動・運動をされている人は鼠径ヘルニアになりやすいと考えています。
職業でいうと次のような職業の方は鼠径ヘルニアに注意が必要かもしれません。
・引っ越し作業や荷物の配達、工場での仕事など重たい物を持ち上げて運ぶ機会の多い方
・営業での外回りやスーパーのレジなどの接客業で立っている時間が多い方
・その他、吹奏楽器の演奏者など腹圧をかけることが多い方
鼠径ヘルニアとスポーツ
近年では、スポーツ選手も鼠径ヘルニアになりやすいといわれています。
特にサッカー選手など、鼠径部に力がかかるスポーツ選手は鼠径ヘルニアになりやすいといえるかもしれません。
また、スポーツヘルニア(鼠径部痛症候群)という病気もあり、これは運動時にのみ鼠径部に痛みがあり、休むと痛みがなくなり、腫れなどの見た目の変化もない状態のことをいいます。
鼠径ヘルニアは筋力トレーニングや運動で予防できる?
鼠径ヘルニアは鼠径部の筋肉・筋膜が弱くなることで起きることを考えると、鼠径部の筋力トレーニングに励むことで鼠径ヘルニアを予防できるのではないかと考える方がいらっしゃいます。しかしながら、過度の筋トレは逆に腹圧をかけることにつながるため賢明とはいえません。
過度な筋力トレーニングを行うよりも、ウォーキングやジョギングなどの運動不足を解消する程度の適度な運動を心がけましょう。また、肥満や喫煙なども原因の一つと考えられていますので、生活習慣を見直すことに取り組むことが宜しいかと思います。
鼠径ヘルニアの手術後の運動・スポーツについて
鼠径ヘルニアになってしまった場合は、放置するとヘルニアの穴が大きなってしまうため、根本的に治す手術を行うことになります。
手術後は翌日から日常生活に支障はありませんが,激しい運動は控えていただく必要があります。ウォーキングやサイクリングなどの軽度な運動は手術後2週間程度たってから、球技などのスポーツは手術後3週間程度たってからされるようご案内しています。
下肢静脈瘤のエコー検査の費用は?静脈逆流の検査は何科に?
ご自身が下肢静脈瘤かどうかを調べる検査方法はいくつかありますので、それらをご紹介したいと思います。
検査を受ける際の参考にしていただければと思います。
下肢静脈瘤の検査方法の種類
■超音波検査(エコー検査)・ドプラー検査
超音波検査(エコー検査)とは、皮膚の上から超音波をあて、反射してくる情報を映像にする検査です。痛みもなく、検査時間は10分程度です。下肢静脈瘤の診断には、超音波検査装置にドプラー機能が備えられていることが必須です。ドプラー機能により血流の方向や速さなどを測ることができます。血液の流れが映像で確認できるため、異常を視覚的に確認できます。血管の内径を測ったり、血流の速さを測定することができます。下肢静脈瘤の診断では、ドプラー機能を用いて静脈の逆流(弁不全)の程度と部位、範囲を測定することが最も重要です。
※ドップラー効果とは、近づいてくる音は高くなり、逆に遠ざかっていく音は低くなるという原理。
※当院ではこの超音波検査(エコー検査)・ドプラー検査を用いて、下肢静脈瘤の診断を行っています。
■下肢静脈造影(レントゲン検査)
足の甲の静脈から造影剤を注入し、レントゲンで撮影する方法です。
造影剤とは、画像診断検査をより正確に行うために使用する薬品の総称です。注射による痛みと伴うため、現在はほとんど実施されなくなりました。
■容積脈波検査
静脈の容積の変化を調べることで異常を見つける検査方法です。
足にマンシェットという空気を膨らませたカバーを巻いた状態で、つま先立ち運動をします。
この運動により、筋ポンプ機能に異常がなければ血液が多く流れ出すようになり容積に変化があらわれます。逆に静脈瘤ができている場合には容積の変化が出ないため、これにより状況を判断します。
■空気脈波検査
下肢を上げ下げしたときの下腿の容量変化を、空気を媒体として測定することで無侵襲的に下肢全体の静脈還流機能を定量的に評価できます。
下肢全体の静脈逆流、静脈閉塞および下腿筋ポンプ機能が測定できます。
エコー検査の流れ
外来受診時に検査を行います。
まずは足の付け根から足首まで専用のゼリーを塗ります。そこにプローブという超音波を発する機械をあてて、血管の状態をモニターで調べます。
造影検査と違い、痛みはありません。
また、レントゲン撮影とは異なるので、被爆の心配もなく、妊娠中の方も受けて頂けます。
検査にかかる時間は10分程度です。
エコー検査の費用は
健康保険3割負担で、1000円〜1500円程度です。
下肢静脈瘤のエコー検査は何科で受けられるのか?
「外科」「血管外科」「心臓血管外科」で受診されるのが一般的かと思います。
形成外科や皮膚科でも検査及び治療をしている病院がありますが、多くはありません。
エコー検査を受ける前にセルフチェック
ご自身の足に以下のような症状がみられた場合は、下肢静脈瘤の可能性をお考えください。
・足がだるくなった
・足がむくむようになった
・足の血管が浮き出てみえる
・足がつりやすくなった
・足がかゆいことがよくある
・湿疹が出やすくなった
・足に熱がこもっているように感じる
・足がむずむずする
こういった症状がある方は、念のために検査をされることをおすすめします。
下肢静脈瘤の術後は運動やリハビリが必要か?後遺症や合併症は?
日帰りで下肢静脈瘤の手術を行った場合に、術後のことでご心配される患者様が多くいらっしゃいます。
これまで通り生活して良いのか、食事や運動など気をつけることはないのか、後遺症が残ることはないのかなど、下肢静脈瘤の術後について詳しくご説明したいと思います。
下肢静脈瘤の術後
下肢静脈瘤の日帰り手術の後は、手術をした足を一日だけ弾力包帯で固定します。
(弾力包帯は翌日または翌々日に来院していただき外します。)
その後は、約1ヶ月間、寝る時以外の時間に弾性ストッキングを着用していただきます。
これらは、血管をしっかりと閉じさせるための圧迫療法です。
弾性ストッキングとは?
弾性ストッキングとは、足の圧迫を目的として作られた医療用のストッキングです。
下肢静脈の血液の流れを促進する働きがあります。
仕事はいつも通りできるのか?
激しい運動を伴う仕事でなければ手術後翌日から問題ありません。
運動はして大丈夫か?
サッカー、野球、テニスなどの激しい運動や長時間の正座などは術後2週間ほど控えてください。
また、ジョギングも同じく2週間ほど控えていただくことをおすすめします。
しかしながら、安静にし過ぎて全く動かないということも良くありません。
日常生活のレベルで適度な歩行など動くことをおすすめします。
食事や飲酒で気をつけることは?
食事については、特別食べてはいけないものはありません。
飲酒については手術後3日間ほど控えるようにしてください。アルコールの影響で痛みが強くなる場合があります。
血栓性静脈炎とは
下肢静脈瘤を放置すると逆流する血液が血管内で固まって炎症を起こすことがあります。これを血栓性静脈炎といいます。レーザー手術やラジオ波手術後にもまれに血栓性静脈炎が起こることもあります。
血栓性静脈炎を予防する方法は、手術後に弾性ストッキングを医師の指示通りに着用し、適度に身体を動かすことです。
日常的な歩行などで十分ですので、動くことを心がけましょう。
術後の後遺症や合併症は?
血管を引き抜く従来のストリッピング手術に比べ、レーザー手術やラジオ波手術では術後の神経痛や出血などの合併症はまれですが、レーザーの熱などで神経が傷つき、一時的に下腿部のしびれが発生するということがあります、下肢静脈瘤は深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の危険因子のひとつです。エコノミークラス症候群を予防するために、とくに術後は医師の指示通りに弾性ストッキングを着用することが重要です。
当院がおすすめしているレーザー手術は、身体への負担が少なく、安全性も非常に高まっていますので、ご安心いただければと思います。
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下肢静脈瘤と薬について。治療や予防する薬はあるのか?
足首からふくらはぎの血管が数珠状にボコボコ浮き出てしまう下肢静脈瘤ですが、どのような治療方法があるのでしょうか?
薬での治療ができないかとご質問いただくことがありますので、それにお答えします。
また、予防できる方法をご紹介したいと思います。
下肢静脈瘤を治療する薬は?
結論から申し上げますと、下肢静脈瘤の「治療薬」というものはありません。
塗り薬も飲み薬も存在しないのが現状です。
足の静脈の弁が壊れたり機能が悪くなったりすることで起きる病気ですので、弁を薬で治すということはできないのです。
漢方やその他の薬で、痛みやこむら返りなどの症状を多少緩和できるとする情報がありますが、いずれにしても根本的な改善には至りません。
下肢静脈瘤の治療方法の種類は?
主には以下の4種類の対処方法があります。
1,保存的治療
生活習慣を見直したり、足を適度に締め付ける弾性ストッキングの着用などで症状を緩和するものです。
長時間の立ち仕事の人は下肢静脈瘤になりやすいなど、生活習慣が影響する病気ですので、できるだけ歩いたり、一定時間同じ姿勢でいないようにしたり、足のマッサージをするなどで症状の緩和を行います。
弾性ストッキングは、足を締めつけてふくらはぎの筋ポンプ作用を助けることによって静脈還流をうながし、足に血液がたまるのを防ぎます。
しかしながら、これらの方法は下肢静脈瘤を根本的に改善する治療方法ではありません。
2,硬化療法
硬化療法は、静脈瘤に薬を注射して固めてしまう治療方法です。
この治療法は軽度の下肢静脈瘤には有効ですが、重度の場合には治療効果がでない場合があります。
3,ストリッピング手術
ストリッピング手術とは、静脈の中に細いワイヤーを差し込んで、静脈を引き抜いてしまう手術です。近年では、内翻式ストリッピング法という、悪くなった静脈のみを少しずつ優しく引き抜く方法ができ、手術後の痛みや出血が軽減されるようになりました。
4,血管内治療
現在の下肢静脈瘤治療の主流がこの血管内治療です。
静脈を引き抜くのではなく、レーザーを使用して内側に熱を加えて焼いて塞いでしまう方法です。
局所麻酔で行えるため、日帰りでの手術も可能であり、体への負担が少なくて済みます。以前は自費診療で数十万円もかかっていましたが、平成23年より健康保険適応となり、患者様の負担が軽くなりました。
下肢静脈瘤の予防方法は?
100%予防できる方法というのはありませんが、以下のことに注意して生活することで、下肢静脈瘤になることを予防又は進行を遅らせることができる可能性はあるかと思います。
・長時間の立ちっぱなしを避ける
・寝るときに少し足を上げて寝る
・塩分や脂肪分の過剰摂取を避ける
・足のマッサージをする(末端から心臓に向かって)
・適度な運動を心がける
少しでも足に違和感があった場合には、無理に自分で対処しようとせずに専門医にご相談いただくことをおすすめいたします。