手掌多汗症の治療
手汗を改善するために、様々な生活上の工夫や外用薬などの情報がありますが、根本的に治すためには手術が必要になります。
手術は交感神経遮断術と呼ばれ、脇の下の皮膚を数ミリ切開し、内視鏡と電気メスを使用して交感神経を切除するという手術です。
この手術には副作用が出ることがあります。
特に代償性発汗という副作用に注意が必要です。
手術時に切除する交感神経の場所によっては、手汗だけではなく、顔や頭の汗を止めることにもなります。汗には熱を発汗させて体温を下げるという役割があるため、夏場の暑い時期などに頭や顔から発汗できないと体温調節がうまくいかないため、他の部位の汗を増やすように脳が指示を出し、胸や背中やお尻などの部位の汗がこれまでより増えることになります。 これが「代償性発汗」と呼ばれているものです。
代償性発汗を最小限に抑えた手術方法
当院では、5000例以上の手術実績から以下のことがわかっています。
第2交感神経(Th2)の遮断では,てのひらや顔の汗がまったくでなくなり、代償性発汗が高度です。第2交感神経は遮断すべきではありません。
第3交感神経(Th3)の遮断では、てのひらの汗が完全にでなくなる一方、代償性発汗が多く出ることもあります。
第4交感神経(Th4)の遮断では、てのひらの過剰発汗が停止し、代償性発汗の程度も軽度(~中程度)です。
これらのことから、当院では、第4交感神経を切除する低位交感神経遮断術という手術を行っています。副作用を100%の確率で回避することはできませんが、最小限に抑えることができると考えています。
手汗はうつるのか?
手掌多汗症の人と握手などで接触するとうつるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが、手掌多汗症は皮膚の接触ではうつりません。
発症する原因は定かになってはいませんが、精神的な要因が大きく関わっているという見方がされています。皮膚の疾患ではありませんので感染することはありません。
発症するのに男女差はあるのか?
来院される方は女性の方が多いですが、それは女性の方が手汗で悩まれ改善したいという方が多いということもあり、手掌多汗症患者様の男女比率の正確な情報はわかりません。
しかしながら、男性特有、女性特有の身体の違いが影響しているとは考えられていないため、男女ともに発症する病気と考えられます。