当院では、鼠径ヘルニアの手術には「クーゲル法」という術式を用います。
それはメッシュを使用して筋膜の穴を塞ぐ手術方法ですが、メッシュの種類や、どのような素材でできているのか、また体内にメッシュを入れてアレルギーや慢性的な痛みが発生する心配はないのかなどのご質問をいただきますので、鼠径ヘルニア手術時に使用するメッシュについて紹介したいと思います。
メッシュを用いる手術方法は大きく2つあります
メッシュを用いる手術方法は2つに大別されます。
違いはメッシュを使用する場所の違いです。
・従来のメッシュ手術
筋膜の穴の上からメッシュで覆う方法です。
メッシュがめくれないように、筋膜とメッシュをしっかり縫い合わせる必要があるため、手術後のつっぱり感や違和感を伴うことがしばしばあります。
・クーゲル法
筋膜の穴の下にメッシュを広げて補強する方法です。
お腹に圧力がかかってもメッシュがめくれることがなく、従来の方法よりも再発率が低くなります。また、手術時の傷が小さくすみ、手術後の痛みも少ないといわれています。
メッシュの種類や素材は?
鼠径ヘルニアの手術にメッシュが使われるようになった歴史は古く、1960年代ごろから使用されていました。
使用するメッシュには、主にポリプロピレンやポリエチレンという素材が使用されています。
ポリプロピレンは、強度が強い、吸湿性がない、酸やアルカリなどの薬品への耐性が強いという特徴を持ち、おむつや医療用の衣料、エアーフィルター、注射器などでも使用されている素材です。
このポリプロピレンメッシュを体内に入れることによる感染や拒絶反応については、アメリカの文献では、3,019例を治療したうち、感染件数は1件、拒絶反応は0件という報告もあり、非常に高い安全性が確認されているため、多くの医療機関で使用されている素材です。
また、アレルギー誘発性、発ガン性もないとされています。
このように安全性が確認されているからこそ、体内に入れることができます。
鼠径ヘルニアの傷が治っていく過程で、メッシュの網目に身体の組織が入り込み、強固な筋膜が作られ再発防止になっていくということです。
当院で行っているクーゲル法で使用するメッシュは下図で示す形状記憶型のメッシュです。
小さなキズから体内に挿入し、体内で形状記憶どおりにパッと広がり、ヘルニアの穴をふさぐことができます。