鼠径(そけい)ヘルニア、脱腸の日帰り手術はおだクリニック日帰り手術外科へ
日帰り手術実績 30,743例
(平成19年10月〜令和6年10月)
当院ではKugel法または腹腔鏡手術による鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術を行ってます。
小さなキズで縫合の必要もありません。痛みの少ない鼠径ヘルニア・脱腸の日帰り手術です。患者様の状態に応じて、Kugel法または腹腔鏡手術による適切な手術方法を選択していただきます。
手術時間はKugel法で15~20分程度、腹腔鏡手術で40~50分程度で全身麻酔で寝ている間に手術は終了しています。術後は3時間ほどで歩いて帰宅できます。
2015年度日本臨床外科学会雑誌年間優秀論文:「Kugel法を行った鼠径部ヘルニア2,363例の経験」小田 斉
2016年2月に第10回九州ヘルニア研究会を福岡で開催しました。
2017年7月に第72回日本消化器外科学会総会(金沢)のイブニングセミナーにて「エキスパートから学ぶ 鼠径部ヘルニアに対する鼠径部切開法~最新デバイスによる既存術式の発展と新術式への挑戦~Kugel法」について小田院長が講演を行いました。
2018年11月29日から12月1日まで第14回アジアパシフィックヘルニア学会がアラブ首長国連邦のドバイで開催され、小田院長はチタンコーチングしたメッシュを用いたそけいヘルニア手術(クーゲル法)を発表しました。
小田院長は日本ヘルニア学会理事として国内外で幅広い学会活動を行い、ヘルニア治療の発展に貢献しています。
日本ヘルニア学会での長年の貢献が認められ、
ネットでご希望の初診・再診の日時をご予約できます。
※遠方からご来院の患者様で初診翌日に手術をご希望の場合は、ネット予約ではなく必ずお電話:092-534-7507でご予約ください。
成人そけいヘルニアとは
足の付け根から恥骨にかけての鼠径(そけい)部の筋膜が破れ、腸などの内臓の一部が皮下に飛び出す病気をいいます。いわゆる脱腸で、外科の病気では虫垂炎(盲腸)とともに最も発症の頻度が高いとされています。加齢により筋膜がゆるむ中年以降に発症することが多く、9割近くは男性です。
筋肉を鍛えても自然治癒しません
放置するとヘルニアの穴も少しずつ大きくなります。腹圧により飛び出した部分がゴルフボール大からこぶし大に膨らみ、下腹部が引っ張られるような痛みを伴います。自然と引っ込んでいる場合が多いのですが、常に脱出したままの状態になる場合もあります。根治のためには、外科的に筋膜の穴をふさぐ手術が必要です。
ヘルニア門で腸が締め付けられ痛みます
腸や脂肪が癒着して腹腔内に戻らず、常に脱出したままの状態が非還納性ヘルニアあるいは嵌頓(かんとん)ヘルニアで、さらにごく稀ですが血行障害をおこすと絞扼(こうやく)ヘルニアになり、激しい痛みを生じ腹膜炎を併発して緊急手術で腸を切除しなければならないこともあります。
当院の手術方法
当院ではクーゲルl法と腹腔鏡手術の両方の手術方法をヘルニア専門医が行っています。ヘルニアの状態に応じて適した手術方法を選択できます。
小田 斉:日本ヘルニア学会理事、日本内視鏡外科学会技術認定
弱くなった筋膜を内側から補強する「クーゲル法」手術
当クリニックでは、米国Kugel博士が開発した、キズが小さく、痛みも再発も少ない「クーゲル法」手術を採用しています。院長は、Kugel博士から直接手術指導を受け、その後も技術の向上に努めてきました。
「クーゲル法」手術を行っている院長(手術時間は15分~20分程度)。
2015年度日本臨床外科学会雑誌年間優秀論文:「Kugel法を行った鼠径部ヘルニア2,363例の経験」小田 斉
これまでのそけいヘルニア手術
そけいヘルニアでは、破れた筋膜の穴をふさぐ手術が必要で、これまでは筋膜を縫い合わせる手術が行われていました。ですが、術後につっぱって痛かったり、弱くなっている筋膜では裂けて再発する恐れもありました。
今では人工膜のメッシュを用いてヘルニアの穴をふさぐ手術が主流となっています。キズが治っていく過程でメッシュの網目に組織が入り込み、強固な筋膜がつくられます。
従来のメッシュ法
メッシュを用いる手術法は2つに大別され、筋膜の穴をメッシュで上から被う従来のメッシュ法と、筋膜の下にメッシュを広げて補強するクーゲル法があります。従来のメッシュ法では、お腹に力を入れるとメッシュに圧がかかって、再発する可能性が若干あります。また、メッシュがめくれないようにメッシュと筋膜をしっかり縫い合わせているため、術後のつっぱり感や痛みを伴うというデメリットも考えられます。
院長が得意とするクーゲル法
筋膜の下にメッシュを固定
クーゲル法では、筋膜の下に形状記憶型のメッシュを挿入し、腹圧がかかってもメッシュがめくれることはありません。メッシュが腹壁を支えているため、異物感が少ないという利点があり、従来のメッシュの欠点であったズレやたるみが少なくてすみます。小田院長は勤務医時代を含めて4500例以上(平成15年1月より令和4年2月まで)のクーゲル法手術経験があり、手術時間は15分~20分程度です。
日本臨床外科学会雑誌平成26年度年間優秀論文「Kugel法を行った鼠径部ヘルニア2,363例の経験」小田 斉
メッシュを筋膜の下に挿入するクーゲル法と腹腔鏡手術では腹圧がかかってもメッシュがめくれないため、再発を少なくすることが期待できます。
クーゲル法では楕円形の形状記憶メッシュを筋膜下に挿入し筋膜の弱い部分をすべて補強します。
再発の危険が少ない
お腹に力を入れてもメッシュがめくれることがないため、従来法より再発が少なくなることが期待できます。
また、そけい部には解剖学的にヘルニアの穴があきやすい部位が5ヵ所ありますが、クーゲル法で用いる形状記憶のメッシュはそれらの部位すべてを一度に補強できるため、手術後に別の穴からの再発を予防できます。
キズが小さく痛みが少ない
皮膚切開はビキニラインに隠れるように約3~4cmだけ切開し、キズ痕はほとんど目立ちません。手術時間は15~20分程度ですみます。手術後の疼痛も少なく,手術後3時間ほどで歩いて帰宅できます。
お腹の傷がより小さな「腹腔鏡鼠径ヘルニア手術(TAPP法)」
腹腔鏡手術では、お腹に3mmから5mmの小さな穴を3ヵ所程度あけます。腹腔鏡で腹腔内を観察しながらクーゲル法と同様に腹膜と筋膜の間にメッシュを挿入し、筋膜の弱い部分をすべて補強します。クーゲル法と同様に筋膜の下側からメッシュで補強するため、再発の少ない丈夫な手術法です。キズは5mmですから、Kugel法よりもさらに痛みが少ない手術方法でより早期に社会復帰できます。痛みが少ないため働き盛りの青壮年の患者様やキズが小さいため女性にもお勧めです.当院では高画質の腹腔鏡を用いて細かい解剖を確認しながら手術を行います。
ヘルニアの原因となる筋膜の欠損部分を直接観察します。欠損部分の場所、大きさを評価した後に、腹膜を剥がしてメッシュを筋肉と腹膜の間に広げて欠損部分を塞ぎます。手術時間は平均で40分〜50分程度です。
腹腔鏡手術のメリットは、
- 全身麻酔なので眠っている間にすべてが終わっている
- 傷が小さく分散されるため傷の痛みが比較的小さく早期の社会復帰が可能
- ヘルニアの穴(ヘルニア門)を腹腔内から直接確認できる
- 反対側の鼠径ヘルニア有無を評価することができる
- 両側鼠径ヘルニアでも同じ傷で同時手術が可能
- メッシュ感染が極めて少ない
- 傷が小さいので時間とともにほとんどわからなくなる、等です。
デメリットは、
- 全身麻酔が絶対必要になる
- 従来法よりも手術時間が長い
- 開腹手術の既往がある場合は癒着が強いと手術が難しくなるまたは不可となる、等です。
当院では日本内視鏡外科学会技術認定医を取得した内視鏡外科医が執刀します。
これまでのクーゲル法と併せて、より患者様の希望沿った手術治療を行ってまいります。
腹腔鏡手術(TAPP法)を行っている小田院長。
腹腔鏡でそけい部を腹腔内から観察すると、ヘルニア門(ヘルニアの出口)を直接観察することができます。
お腹のキズは5mmと小さいため、術後疼痛が軽微です。キズ跡はほとんど目立たず、薄く消えていきます。
クーゲル法や腹腔鏡手術とLichtenstein法など他の皮膚切開法との違い
クーゲル法は皮膚を切開して、筋膜と腹膜の間を潜水艦のように潜り抜けて筋膜と腹膜の間に形状記憶メッシュを挿入します。神経、血管、精管(女性では子宮円靭帯)がある鼠径管を切開しないため、神経損傷などの合併症が少ない利点があります。腹腔鏡ヘルニア手術は小さなキズから腹腔鏡でお腹の中から腹膜を切開してクーゲル法と同様に鼠径管を切開せずに腹膜と筋膜の間にメッシュを挿入します。 一方、Lichtenstein法などの他の皮膚切開法では、クーゲル法や腹腔鏡手術と違い、神経、血管、精管(女性では子宮円靭帯)がある鼠径管を切開します。さらに神経が通る筋膜の上にメッシュを固定するため、神経損傷などを併発する危険がクーゲル法や腹腔鏡手術よりも若干高くなることが危惧されます(クーゲル法や腹腔鏡手術では筋膜の下にメッシュを固定します)。
抜糸や消毒の必要がない
当クリニックでは、内部に溶ける糸を用い、皮膚切開部は特殊な生体用瞬間接着剤やテープで固定しますので、術後に抜糸や消毒の必要がありません。手術翌日よりシャワー浴、翌々日より入浴が可能です。
手術費用について
健康保険の適応となり、健康保険3割負担の患者様の場合はクーゲル法で約5万円、腹腔鏡手術で約10万円(高額医療の対象ですので、高額医療の限度額が8万円の患者様では最終的な負担額は限度額の8万円となります)。当クリニックでは日帰り入院となります。クレジットカードでのお支払いも可能です。生命保険の手術給付金の対象にもなります。
院長の取り組み
院長は全国から若い外科医の見学を受け入れクーゲル法を指導してきました。
右の写真は全国から集まった600人以上の外科医の前で、そけいヘルニア手術について招待講演をしています。
(第14回外科フォーラム,平成19年7月29日,グランドプリンスホテル赤坂,東京にて)
2017年7月に第72回日本消化器外科学会総会(金沢)のイブニングセミナーにてエキスパートから学ぶ鼠径部ヘルニアに対する鼠径部切開法~最新デバイスによる既存術式の発展と新術式への挑戦~Kugel法について講演を行いました。
Q&A
そけいヘルニアとは、どんな病気ですか?
ももの付け根から恥骨あたり(そけい部)の腹壁筋膜が弱くなり、その裂け目から腹膜に包まれた腸や脂肪など、内臓の一部が皮膚の下に脱出してくる病気がそけいヘルニア(いわゆる脱腸)です。長時間歩いたり、腹部に力を入れると、ゴルフボール大からこぶし大に足の付け根が膨らみ、下腹部が引っ張られるような痛みがあります。胎生期から腹壁筋膜の抵抗の弱い部分があり幼児期に発症する場合と、加齢とともに筋膜がゆるみ中年以降に発症する場合があります。外科の病気では虫垂炎(いわゆる盲腸)とともに最も頻度が高いとされ、その9割近くは男性です。
放置しておくとどうなるでしょうか?
年月とともに、徐々に膨らみが大きくなっていきます。膨らみを手で押さえたり、睡眠中には自然と引っ込んでいることが多いのですが(還納性)、腸や脂肪が癒着して、常に脱出したままの状態になる場合もあります(非還納性)。脱出した腸が、ヘルニアの出口で締め付けられて血行障害をおこすと(かんとん)、激しい痛みを生じ、腹膜炎を併発して、緊急手術で腸を切除しなければならないこともあります。しかし長期放置してもかんとんして緊急手術を行うことは1万例に1人ですから極めてまれです。
どんな治療が行われるでしょうか?
腹壁の筋肉を鍛えても、自然に治癒することはないため、根治するためには手術が必要です。
以前は筋膜の裂け目を縫い合わせる手術(従来法)でしたが、筋膜がつっぱるため術後の痛みが強く、弱い部分が再び裂けて、再発するケースも少なからずありました。現在は、ポリプロピレン素材の人工膜メッシュで筋膜を補強し、ヘルニアの出口をふさぐ手術が主流です。手術後の創傷治癒の過程で、メッシュの網の目に組織が入り込み、強固な筋膜を形成していきます。この手術法は筋膜の上にメッシュを固定する方法と、筋膜の下にメッシュを挿入する方法に分けられます。筋膜の上にメッシュを固定する方法は腹圧が過度にかかると、メッシュが持ち上がり、再発する危惧が少しだけあります。
一方、筋膜の下にメッシュを挿入する方法では、腹圧を筋膜の内側で均等に支えるため、力学的に優れています。さらに、そけい部には、解剖学的に筋膜の弱い部分が数ケ所に潜在するため、将来のヘルニア再発を予防するためには、そけい部全体をメッシュで補強する必要があります。メッシュを用いた手術は、日本では10数年前より数種類の手術法が行われていますが、形状記憶型メッシュを用いた手術法(クーゲル法)は、形状記憶で広がるメッシュを筋膜の下に挿入する方法で、これまでの欠点であったメッシュの移動やたるみが少ない手術法です。
過去に他の方法で手術をうけた再発ヘルニアでは、ヘルニアの出口以外にも脆弱な部分があることが多く、そけい部全体をクーゲル法で確実に補強すれば、以後は再発する危険は少ないと思われます。通常のメッシュを用いた方法に比べ、クーゲル法では皮膚切開のきずも約3~4cmと小さく、当院での手術時間は15~20分程度です(手術実績)。メッシュは筋膜の下に広がるため、術後のつっぱりや異物感は少なくなります。もちろん健康保険の適応で、手術料は他のメッシュの方法と同額です。当院ではクーゲル法も後述する腹腔鏡鼠径ヘルニア手術も日帰り手術で行っていますから、入院のわずらわしさがありません。体内には溶ける糸を用い、皮膚切開部に生体用瞬間接着剤を用いるため、抜糸の必要がなく、手術翌日からシャワーや入浴が可能です。
腹腔鏡鼠径ヘルニア手術(TAPP法)は、腹腔鏡で腹腔内を観察しながらクーゲル法と同様に腹膜と筋膜の間にメッシュを挿入し、筋膜の弱い部分をすべて補強します。クーゲル法と同様に筋膜の下側からメッシュで補強するため、再発の少ない丈夫な手術法でより早期に社会復帰できます。キズは5mmですから、Kugel法よりもさらに痛みが少ない手術方法です。 当院では患者様の状態に応じてクーゲル法と腹腔鏡手術を選択しています。
子供や若い女性にもメッシュを用いるのですか?
からだが成長している段階ではメッシュを用いるべきではありません。乳児期や学童期のヘルニアでは、筋膜を補強する必要はなく、ゆるんだ腹膜を根元で縛る(高位結紮法)方法で、ほとんど再発しません。何歳くらいからメッシュを用いて筋膜を補強すべきかは、はっきりした基準はありませんが、私は思春期以降の成人ヘルニアに対しては、原則としてすべてクーゲル法を用いています。妊娠可能な若い女性にメッシュを用いるかは、専門家のあいだでも賛否両論がありますが、クーゲル法のように筋膜の下に平坦にメッシュが広がっている状態では、将来、妊娠しておなかが大きくなっても影響はないと考えています(当院では女性には男性よりも柔らかいメッシュを用いています)。